Thysanoptera of Japan

日本のアザミウマ

はじめに

 アザミウマはアザミウマ目に属する昆虫の総称で、英名通りにスリプス(thrips)と呼ばれることもある。体長は通常1~2mmで、大きくても15mm程度の微小昆虫である。生きた植物体上だけでなく枯れ木、枯れ枝、落ち葉層にも生息し、また陸上だけでなく水草などにも生息し、食性も食植性、食菌性、捕食性と幅広い。微小なため目につきにくいが、植物病原ウイルスを媒介するなど農作物に重大な被害を及ぼす種も知られる。アザミウマ目は世界で約720属6200種程が知られ、アザミウマ亜目とクダアザミウマ亜目の2亜目9科に分類される。前者は8科を含むが後者はクダアザミウマ科のみからなる。
 一方、日本産アザミウマでは、宮崎・工藤(1988)が1898~1985年の間に我が国で報告された論文680編をまとめ、その時までに記録された4科93種168種(属までの同定にとどまるもの、検疫での記録種を除く)をリストアップした。また、1988年には全国農村教育協会から「農作物のアザミウマ(宮崎・工藤・梅谷編)」が出版された。その後も日本産アザミウマの報告は続き、日本語で書かれた書籍は農作物を加害する種の解説が散発的に出版されるだけであったが、2022年に全国農村教育協会から「日本原色アザミウマ図鑑 Thrips of Japan(岡島・桝本)」が出版され、その時点で日本から記録がある全4科152属454種(属までの同定にとどまる4属5種を含む)について解説を付してリストアップした。このように、日本産アザミウマの種数は30数年間で3倍弱に増えたが、研究者が少なく調査が十分に行き届いていないことを考えると今後もまだまだ増えると思われる。
 本サイトではページ数の関係で「日本原色アザミウマ図鑑」に掲載できなかった補足情報や追加情報、正誤表などを掲載していく予定である。